アルコールチェック記録の保存期間は?記録管理ガイド|義務や管理方法を解説
運転前後のアルコールチェック(酒気帯び確認)は、実施するだけでなく、記録を一定期間保存することも事業者の義務です。保存期間や対象範囲を誤ると、監査や事故対応時に適切な説明ができず、企業にとって大きなリスクとなります。
本コラムでは、アルコールチェック記録の保存期間とその法的根拠、保存すべき必須項目、紙・電子・クラウドでの保存方法、遠隔実施時の記録の残し方、保存期間満了後の扱い、違反時のリスクまでを体系的に整理し、解説します。
アルコールチェック記録の保存期間は1年間
アルコールチェック記録の保存期間は、道路交通法施行規則で「1年間」と定められています。
重要なのは、チェックを実施した事実だけでなく、第三者に説明できる形で記録を残すことです。法令で定められた記録項目を満たし、必要なときにすぐ提示できる状態にしておくことが求められます。
参考:
e-GOV 「道路交通法施行規則 第9条の10第7号」
https://laws.e-gov.go.jp/law/335M50000002060#Mp-Ch_2_4-At_9_10
警察庁「安全運転管理者の業務の拡充等」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/index-2.html
保存すべき記録項目(必須項目)
アルコールチェック記録は、保存期間を満たしていても、記録項目が欠けている場合は「適切に運用している」とは言えません。
ここでは、法令で定められている必須項目と、不備になりやすいポイントを解説します。
アルコールチェックでは、「実施したかどうか」だけでなく、「誰が・いつ・どの車で・どの方法で確認し、結果はどうだったか」を説明できることが重要です。
そのため、保存期間を満たしていても、記録項目に不足がある場合、監査や事故対応で実質的に「運行実態を正しく証明できない」記録になります。
記録項目は、後から疑義が生じやすい点を踏まえて設計すると、より適切に運用できます。たとえば、運転者を特定できなければ本人確認が不十分になったり、車両番号が無ければ運行記録との紐づけができません。確認方法が曖昧な場合、アルコール検知器を使用したのか、目視のみで確認したのかが不明確になります。
アルコールチェック記録の不備を防止するためには、必須項目をテンプレート化し、空欄が残らない記入ルールを整備することが、効果的な対策です。
記録簿に記入する基本項目(8項目)
アルコールチェック記録には、最低限記載すべき基本項目があります。
実務上、一般的に整理される必須項目は次の8項目です。
・確認者名 ・運転者名 ・車両を特定できる情報(自動車登録番号など) ・確認日時 ・確認方法 ・酒気帯びの有無 ・指示事項 ・その他必要事項 |
運転前・運転後の記録を同じ様式で残すと、運行前後の確認状況を照合しやすく、監査時にも確認しやすくなります。確認方法の欄には、アルコール検知器の使用有無、対面か遠隔か、目視確認の実施有無などを具体的に記入できる欄を用意すると、記録の確実性を高めることができます。

記録の不備で問題になりやすいポイント
不備として指摘されやすい例は、次の通りです。
・空欄がある
・略称で記載されており、人物が特定できない
・確認者が誰か分からない
・車両が特定できない
・確認方法が「実施」など曖昧になっている
・指示事項が常に空欄になっている など
通常業務では問題がないように見えても、監査や事故発生時には「説明できない記録」と判断される可能性があります。
訂正方法もルール化が必要です。紙の記録簿の場合は二重線で訂正し、訂正者が分かる形にします。電子の場合は追記や変更履歴が残る形で修正し、後から「誰が・いつ・何を直したか」を説明できる状態にしておきます。上書き修正のみの運用は、改ざんを疑われるおそれがあるため避けるべきです。
記録不備の防止策で効果が出やすいのは、記録簿のテンプレート化と、チェック工程の標準化です。
たとえば、提出時点で必須項目がそろっているかを安全運転管理者が確認し、未記入があればその場で差し戻す運用にします。この確認作業を日次業務として組み込むことで、1年分の記録品質を一定に保ち、後からまとめて修正する負担を減らせます。
アルコールチェック記録の保存方法(紙・Excel・クラウド)
保存方法は紙・電子のいずれも可能ですが、「探せる・改ざんされにくい・消失しにくい」状態を作る運用設計が重要です。
ここでは、媒体別の管理ルールと混合で運用する場合の注意点を整理します。
紙での管理は導入しやすい一方、記録の量が増えるほど検索性や保管スペースが課題になります。Excelなどを使用する電子管理は、検索性に優れますが、権限管理やバックアップを怠ると改ざんや消失のリスクが高まります。
クラウドサービスは、一元管理や自動化に強みがあり、履歴も残るため、改ざん防止や厳格な運用に最も適しています。一方で、懸念点には、紙やExcel管理よりも導入コストが発生する点があります。

紙で保存する場合の管理ルール
紙で運用する場合は、記録用紙の回収方法と保管方法をあらかじめ決めておくことが重要です。
運転者が記入した用紙の提出先、回収担当、回収タイミング、未提出者の確認方法までを決めておかなければ、記録漏れが発生しやすくなります。
保管時は、事業所や日付別にファイリングし、後から確認しやすいように分類します。
たとえば、「事業所別のバインダーに月ごとに保管する」「月内は日付順に並べる」といった単純なルールにすると継続しやすくなります。
紙管理で特に注意すべき点は、訂正方法と紛失対策です。訂正が必要な場合は二重線を使用し、訂正者が分かる形にするなど、社内ルールで統一しましょう。保管場所は施錠できるキャビネットにし、持ち出しを禁止するなど、物理的な管理ルールも定めておく必要があります。
電子データで保存する場合の管理ルール
Excelやスプレッドシート、専用システムなどで電子保存する場合は、ファイル設計と権限設計が記録管理の品質を左右します。
まずは、ファイル命名規則を固定し、たとえば「拠点名_YYYYMM_アルコールチェック」のように、検索しやすい形式にします。フォルダ構成も拠点別・年度別などに整理し、階層を深くしすぎないよう注意します。
次に、アクセス権限を分けます。入力者全員が過去の記録を自由に編集できる状態では、意図せず上書きしてしまうリスクや、改ざんを疑われるリスクが高まります。
改ざん防止のため、次のような対策を検討しましょう。
・編集権限者を限定する
・確定後はPDF化して保管する
・確定版フォルダは編集不可にする
・更新履歴が残る仕組みを使う など
さらに、バックアップも必須です。端末故障や誤削除、ランサムウェア被害などによって1年分の記録が消失すると、保存期間の義務を満たせなくなるおそれがあります。
クラウドで保存する場合の管理ルール
クラウドサービスを活用する管理の場合は、ドライバーが実施したアルコールチェックのデータを自動で保存できる仕組みを構築できます。そのため、ドライバーと管理者双方の確認作業を大幅に削減しながら、より厳格な運用を実現できる点が強みです。
しかし、クラウドサービスを利用する場合でも、安全運転管理者などによる確認は必要です。定期的にチェック漏れがないかどうかを確認するプロセスを運用に組み込むことが重要になります。
監査・事故対応で過去データが必要になるケース
過去データが1年を超えて必要になるケースとして、事故や違反に関する調査が挙げられます。事故発生後、調査・示談・訴訟までに時間がかかる場合、当時の運用実態を示す資料として、過去のアルコールチェック記録の提出や、説明を求められる可能性があります。
また、社内監査の周期が1年を超える企業では、取引先から安全管理体制の証跡として複数年分の記録提示を求められるケースもあります。労務トラブルにおいて、「適切に指示・教育していたか」が争点になる場面でも、蓄積された記録が有効となる場合があります。
そのため、法定で定められている保存期間の1年とは別に、任意で2〜3年程度保存期間を延長したり、閲覧頻度の低いデータをアーカイブ領域に移す運用を検討すると安心です。保存期間を延長する場合も、目的、期間、閲覧権限を明確にして、漫然とデータを溜め込まないことが大切です。
保存義務違反のリスク
保存義務違反は、行政指導や安全運転管理者の適格性に関する問題だけでなく、飲酒運転発生時に企業責任を問われる要因になり得ます。
ここでは、直接的な罰則の有無にかかわらず生じるリスクを整理します。
保存義務違反は、単に記録書類がないという問題にとどまりません。行政の指導対象になり得るだけでなく、企業が安全管理を怠っていたと評価される材料にもなります。そのため、万が一事故が起きた場合には、企業が受けるダメージがより大きくなるおそれがあります。
現場では「忙しくて保存が追いつかない」「記録はあるが散在している」といった状況が起こりがちですが、監査では記録の有無や管理状態といった「結果」が見られます。記録を適切に保存できない仕組みでは、アルコールチェックの実施自体も形骸化しやすく、安全対策としても十分とは言えません。
罰則の有無にかかわらず、企業責任・信用維持・再発防止の観点から、保存体制を整える必要があります。
まとめ
法令で定められているアルコールチェック記録の保存期間は、1年間です。記録は、アルコールチェック実施の事実や運行実態を、後からでも説明できる状態で残しておくことが求められます。
アルコールチェック記録の保存義務は安全運転管理者の選任が義務付けられている事業者が対象です。義務化の対象となる車両台数・運転者の範囲を事業所単位で整理し、車両台数の確認漏れや対象者の漏れを防ぐことが第一歩です。
記録は、必須の8項目を満たしたうえで、紙・電子・クラウドサービスのいずれの場合でも「探しやすい・改ざんされにくい・消失しにくい」運用を整えることが重要です。
特に、紙管理の場合には、必要な記録を探すのに時間がかかる場合があります。一方で、電子媒体で管理する場合は、記録の改ざん防止やバックアップなどに注意を払う必要があります。
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