コラム

2025.12.03

ITエンジニアはなぜ辞める?定着につながる職場づくりのヒントとは

IT業界は技術革新のスピードが早く、求められるスキルや役割も年々高度になっています。一方で、人材の流動性が高く、優秀な人材が短期間で別の会社へ移ってしまうケースも珍しくありません。新しい人を採用するにも時間とコストがかかり、現場は常に人手不足に陥ります。

その結果、一部の社員に業務負担が集中してしまい、さらに離職を招くなどの悪循環に陥る企業も多くあります。

いま、経営者やマネジメント層に求められているのは、「辞めさせない」ための管理ではなく、社員が「この会社で働き続けたい」と思える環境をつくることです。

本コラムでは、IT業界特有の退職理由をひも解きながら、社員のエンゲージメントを高めるために実務の中でできる対策や取り組みを紹介します。組織の安定と働きやすさを両立させるためのヒントとして、参考にしていただければ幸いです。

IT業界の離職率とその背景

実はIT業界の離職率は、他の業種と比べて目立って高いわけではありません。厚生労働省の調査資料によると、令和5年の年間離職率は全産業で15.4%となっており、そのうちIT業界を含む情報通信業の離職率は12.8%と平均より少し低い数値となっています。

参考:厚生労働省 -令和5年雇用動向調査結果の概要-
表4-2 産業、就業形態別入職率・離職率・入職超過率(令和5年(2023))
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/24-2/index.html

ただし、離職率の数字に惑わされてはいけません。注目すべきは転職率の高さです。IT業界では離職率こそ目立たないものの、転職率は他の業種に比べて格段に高くなります。マイナビの調査によると、転職者全体での同業種への転職率は58.3%なのに対し、前職がIT業界だった人の同業種への転職率は75.5%と全体よりも高い結果となっています。

その背景にはいくつかの要因があります。まず、ITスキルは汎用性が高く、経験や知識を持つ人材は業種や企業規模を問わず求められるため、他社への転職が容易です。また、発展し続けるIT社会に伴い、IT知識を持つ人材の求人は常に豊富で、給与や待遇を比較しやすい環境が整っていることも、転職意欲を後押しします。

さらに、プロジェクトごとに業務が区切られる働き方も影響しています。ひとつの案件が終わったタイミングで「次は別の会社で新しい経験を積もう」と考える人は少なくありません。会社への帰属意識が薄れやすい構造的な事情が、転職率の高さを生み出しています。

こうした特性を踏まえると、IT業界における人材確保において、「辞めさせない」ことよりも、社員が自然と“ここにいたい”と思える環境をつくることが最重要課題となります。

参考:マイナビ「転職活動における行動特性調査 2022年度版」 同業種・異業種どちらに転職したか

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IT業界特有の離職理由

IT業界での転職・離職の背景には、業界特有の働き方や環境要因があります。ここでは、一般的な離職の理由とは異なる要因として特に多く見られる5つを紹介します。

給料や成長環境への不満

IT技術は日々進化しており、エンジニアやクリエイターは常にスキル更新を求められます。しかし、最新技術に触れる機会が限られていたり、研修・資格取得の支援が十分でない場合、「このままでは自分の市場価値が下がる」という不安が芽生えます。結果的に、より成長できる環境や高い報酬を求めた転職の決断につながりかねません。

納期プレッシャーによる長時間労働

ITプロジェクトでは、顧客の急な仕様変更や追加要望が珍しくありません。これに応えるため、夜間や休日も作業が発生し、常にタイトなスケジュールで納期に追われます。短期的には達成感があっても、これが続くと心身の疲労が蓄積し、現状よりバランスよく働ける環境を探すきっかけになります。

帰属意識の希薄さ

案件ごとにチーム編成が変わるため、数カ月〜1年単位でメンバーが入れ替わります。そのため、深い人間関係を築く前にプロジェクトが終了してしまい、会社全体への愛着や誇りが育ちにくいのが課題です。「会社」よりも「案件」にコミットする感覚が強くなり、転職への心理的ハードルが下がります。

孤独感や疎外感

リモートワークや個別作業中心の職場では、ちょっとした雑談や相談の機会が大幅に減少します。特に、入社間もない社員や、別拠点で働くメンバーは孤立感を抱きやすく、「この会社に自分の居場所はあるのか」という不安を感じやすくなります。孤独はモチベーション低下だけでなく、早期離職の大きな要因にもなります。

燃え尽き症候群(バーンアウト)

短期間で成果を出すプロジェクトを繰り返すと、達成感よりもメンタルの消耗感が上回ることがあります。「やっと終わった…」という安堵の後に、「次の案件も同じ繰り返しだ」という虚無感が押し寄せ、モチベーションの維持が難しくなります。場合によってはキャリアチェンジを考えるきっかけにもなります。

これら5つの理由は、一見バラバラに見えても共通点があります。それは「心理的負担の大きさ」と「会社とのつながりの薄さ」です。

待遇改善や制度導入も重要ですが、社員1人ひとりが安心して働ける環境づくりができなければ、離職・転職の根本的解決にはつながりません。

残りたいと思われる職場とは

人材の定着を考える際、多くの企業は「辞めさせないための対策」に意識を向けます。しかし、引き止めるための対策だけでは、根本的な解決にはなりません。大切なのは、社員が自発的に“この会社で働き続けたい”と感じる環境をつくることです。そのためには、待遇や制度の改善だけでなく、日々の職場環境を工夫することが重要です。

たとえば、最終的な結果だけでなくそこに至るまでのプロセスの段階で、小さな成果や努力を認めることは、社員の自己肯定感とやる気を育てます。

また、困ったときに気軽に相談できる空気があれば、安心して挑戦できます。一見業務に直接関係のない雑談や軽い相談といったコミュニケーションは、実は人間関係を温め、孤立感を減らす大切な時間です。

WEB会議

特にIT業界は、案件単位でメンバーが入れ替わるうえ、リモートワーク中心の働き方も多く、社員同士の距離が生まれやすい環境です。だからこそ、物理的な距離はあっても「見守られている」「つながっている」という感覚を保つ仕組みが重要です。この「つながり」が、社員と会社との信頼関係を支えます。

結果として、社員のエンゲージメントが向上し「ここで働きたいから残る」という前向きな選択が生まれます。この状態こそが、社員が長く力を発揮できる組織づくりのカギになります。

社員のエンゲージメント向上には支援サービスがオススメ

社員が「この会社で働き続けたい」と感じる職場をつくるには、日常の小さな変化を素早く察知し、適切なフォローができる環境が重要です。しかしIT業界では、案件単位でチームが変わることやリモートワークの普及により、管理職がメンバーのコンディションを直接把握しづらいのが実情です。

そこで役立つのが、従業員エンゲージメント向上支援サービス「ここレポ」です。

ここレポ」とは、毎日のサーベイから従業員のモチベーションやメンタルの状況をリアルタイムで把握し、業務の成果や頑張りを承認することで、従業員のエンゲージメント向上を支援するサービスです。単なる勤怠や進捗の管理だけではなく、社員の状態を可視化し、関係性を深めることに役立ちます。

たとえば、勤務前後のサーベイに加えて、社員が軽い相談や日々の小さな困りごとを気軽に発信できる「報告機能」があります。管理者はそれに対して、コメントやタイムスタンプを付けることで、日頃から見ている意思を示すことができ、やりとりの負担を最小限にしながらも、双方に「つながっている」という安心感を生み出します。

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さらに「AI表情分析」によって、サーベイだけでは気づきにくい疲労感やメンタル低下の兆しを、表情データから検知できます。顔写真は毎日撮影されるため、リモート勤務や別拠点での勤務でも直接会わずに表情の変化の確認が可能で、こうした小さな変化の蓄積が、早期対応のきっかけとなります。

こうして、孤立感やメンタルの不調を未然に防ぎながら、社員1人ひとりのモチベーションを維持しやすい職場環境を築くことができます。その結果、単に離職を防ぐだけでなく、「この会社に残りたい」と思える前向きな職場づくりが可能になるのです。

「IT業界の離職・転職の背景と働き続けたい職場づくり」まとめ

IT業界では、離職率そのものはそれほど高くなくても、転職が多い傾向があります。社員が環境を変える背景には、成長の機会が限られている、長時間労働や孤立感を感じる、チームへの帰属意識が薄れてしまうなど、業界特有の要因が重なっています。

こうした課題に対して、ただ「辞めさせない」ことだけを考えて管理を強めても、根本的な解決にはなりません。大切なのは、社員が自然に「ここで働き続けたい」と思える環境づくりです。日々のちょっとした気づきや成果の承認、気軽に相談できる関係性、孤立を防ぐ仕組みづくりなど、小さな取り組みの積み重ねが、社員のモチベーションを支え、人材の定着につながります。

こうした取り組みをサポートするのが、従業員エンゲージメント向上支援サービス「ここレポ」です。勤務前後のサーベイでの軽い相談や報告、AI表情分析によるコンディションの可視化により、管理職は社員の変化に早い段階で気づくことができ、適切なタイミングでのフォローにつながります。これにより、社員は自分の状態を安心して共有でき、管理者との「つながり」を感じながら働くことができるようになります。

鈴与シンワート従業員エンゲージメント向上支援クラウドサービス「ここレポ」は、人事担当者に役立つ機能や業務サポートに力を入れています。お気軽にお問い合わせください

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著者

「ここレポ」サポート担当

「ここレポ」サポート担当

働き方の多様化に伴い在宅勤務が定着し、企業は従業員の定着や業務改善につながる従業員のモチベーションアップが課題となっています。
この課題解決方法の一つとして、従業員のエンゲージメント向上が有効とされ注目を集めています。
従業員が元気に安心して働ける環境づくりと多様化する働き方を支援するためのサービスや、課題解決へのヒントをお伝えしていきます。
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