コラム

2025.12.12

若手社員の早期離職を防ぐには?―入社後ギャップとその対処法

新入社員の採用には、多大な労力とコストがかかります。求人活動や説明会の準備、面接・選考にかける時間、さらには競争の激しい市場の中で内定承諾を得るまでの道のりは、企業にとって決して簡単なものではありません。

そのため、新入社員の採用活動を成功させることばかりに注目しがちです。ところが、本当に重要なのは、新入社員が入社後にどのように育ち、職場に定着していくかという点です。せっかく採用できても、短期間で辞めてしまえば採用活動の苦労が水の泡になり、職場全体にも大きな影響を及ぼします。

実際、厚生労働省の調査によると、新卒入社した社員の約3人に1人が3年以内に離職しているのが現状です。その背景には、労働条件や待遇面だけでなく、若い世代特有の価値観や「入社前後のギャップ」があります。

本コラムでは、新入社員がなぜ早期に辞めてしまうのか、その理由を整理し、若い世代特有の背景を踏まえた上で、企業ができる対策や取り組みを紹介します。新入社員が内定後も定着するためのヒントとして、参考にしていただければ幸いです。

 新入社員の離職率と現状

新入社員の定着は、どの企業にとっても大きな課題です。厚生労働省の調査によれば、大卒就職者は34.9%、高卒就職者は38.4%が入社から3年以内に離職しています。この数字は年々少しずつ増加傾向にあります。

参考:厚生労働省 「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します」
   https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00007.html

さらに深刻なのは、新卒入社した社員が1年以内に離職してしまう問題です。厚生労働省の別の資料によると、大学卒の就社後1年以内で離職した割合は、毎年1割近くとの結果が出ています。

入社して1年以内での早期離職は、企業にとって非常に大きな損失となります。早期離職のリスクは、採用にかけたコストや教育投資が短期間で失われるだけでなく、チーム内の人員不足や既存社員への負担増、職場の雰囲気悪化といった“見えない損失”で企業の成長を妨げてしまうことにつながる可能性を秘めています。

さらに、人材獲得競争が激しくなる中で、新入社員の離職は採用市場での評判にも影響します。「入社してもすぐ辞めてしまう会社」というイメージは、学生や求職者の間であっという間に広がり、採用活動そのものを難しくしてしまうリスクすらあるのです。

つまり、新入社員の早期離職は、目の前の人材ロスだけでなく、将来の採用力低下にもつながる、企業にとって深刻な課題といえます。

参考:厚生労働省プレスリリース「新規学卒就職者の離職状況を公表します」
   https://www.mhlw.go.jp/content/11652000/000845829.pdf

新入社員特有の離職理由

新入社員の早期離職を防ぐには、まず彼らの心情や背景を理解することが重要です。また、新入社員が早期に離職してしまう理由は一つではありません。複数の要因が重なり合い、最終的に「この会社では続けられない」という判断につながっています。この章では、特に多く挙げられる主な離職理由を紹介します。

労働環境・労働条件に対する不満

入社3年目以下の社員が退職理由として最も多く挙げるのが「労働環境・労働条件」への不満です。リクルートの調査では、入社3年以内に自己都合で退職したことがあると回答した人の25.0%が「労働時間や休日、勤務環境に不満があった」と回答しています。

参考:リクルートマネジメントソリューションズ プレスリリース「新人・若手の早期離職に関する実態調査」の結果を発表
   https://www.recruit-ms.co.jp/news/pressrelease/0000000417/

特に近年の若手社員は、単に「長時間労働がつらい」という感覚だけでなく、ワークライフバランスを重視する価値観が強い傾向にあります。残業や休日出勤が常態化していると、「この会社で自分らしい生活は送れない」と判断されやすいのです。

また、勤務時間や休日だけでなく、働き方の柔軟性も大きな関心事になっています。たとえば、リモートワークの可否やフレックスタイムの運用、休暇制度の活用のしやすさなどです。「制度はあるが、実際は活用しづらい」という状況も、不満の蓄積につながります。

入社前後のギャップが生む不満

新入社員の早期離職理由の中で、入社前後のギャップに関する不満もよく挙げられます。たとえば、「専門的な仕事に携われると思っていたのに、実際は雑務が多かった」「チームで働けると思ったら、個人作業が中心だった」といった業務内容のミスマッチが起きるケースはよくあります。

また、「提示された給与は魅力的だったが、実際には残業代や手当の仕組みが想定と違っていた」など待遇面での不満も挙げられます。こうした不満は、必ずしも「条件が悪いから」だけで生じるわけではありません。かえって、採用段階で描いたイメージとの落差が大きいほど、心理的なダメージにつながりやすくなります。期待していた分、裏切られたと感じてしまうためです。

イメージ画像:頭を抱える会社員

つまり、新入社員の不満には 現実の職場環境と入社前の期待の差が大きく影響しています。この差をいかに小さくするかが、早期離職を防ぐためのカギになります。

人間関係・コミュニケーション不足

新入社員の離職理由の中で頻繁に見られるのが、職場での人間関係やコミュニケーション不足です。マイナビの調査では、新入社員に限定せず全ての年代で早期離職の理由を調査したところ、20代は「職場の雰囲気が良くなかった/自分に合わなかった」と「上司/同僚などの職場の人間関係が合わなかった」を挙げている人の割合が特に高いことが分かり、人間関係と離職の関係を示しています。

参考:マイナビ キャリアリサーチLab 「早期離職に繋がる入社後のギャップとは?-年代別の理由と企業の対策を紹介」
   https://career-research.mynavi.jp/column/20240702_81747

社会人として初めての職場では、誰もが自分を受け入れてもらえるのか、困ったときに相談できる人はいるのかなどと不安を抱えています。その中で、上司や先輩との距離が遠く、気軽に声をかけられない状況が続くと、孤独感を募らせてしまいます。

また、近年の若手世代は学生時代からSNSを通じてフラットに意見を交換してきた背景もあり、「一方的に指示される」コミュニケーションに慣れていないという特徴があります。仕事を覚える過程で叱責ばかりが続くと、「自分はここに居場所がない」と感じやすくなります。

一方で、人間関係が良好であれば、多少の労働条件や業務のミスマッチがあっても乗り越えられるケースは少なくありません。裏を返せば、「相談できる人がいる」「気持ちを受け止めてもらえる」という安心感が、離職防止において大きな役割を果たすといえます。

若手世代特有の「早期離職」の背景

新入社員の早期離職を考える上で、世代特有の価値観や環境の影響を踏まえることも欠かせません。

若手世代は、インターネットやSNSが当たり前の環境で育ち、常に多様な選択肢に触れてきました。そのため、自分に合わなければ別の道を選ぶということに抵抗が少なく、転職やキャリアチェンジに対する心理的ハードルが従来世代に比べて低い傾向にあります。

また、学生時代から「自分らしさ」や「やりがい」を大切にする文化で育ってきたため、働く上でも成長実感や意義のある仕事を重視する傾向が強く見られます。最近では、面接時に「ガクチカ」(=「学生時代に力を入れたこと」)と呼ばれる定番の質問項目があり、Z世代は結果や成果よりも、目標に対してどのような工夫をしたか、何を学んだかを重視する傾向にあります。

参考:ベストレ Z世代と話す前に知っておきたい「就活・転職ワード」辞典|会話が噛み合わない理由とは?
   https://trend.bestmatch.co.jp/ja/besttrend/job-word-generation-gap

さらに、SNSを通じたオープンなやり取りに慣れていることから、職場での心理的安全性に対して敏感です。「意見を言っても大丈夫」「困ったときに気持ちを受け止めてもらえる」のように拒絶を恐れずに行動できる環境でなければ、長期的な定着は難しくなります。

こうした背景を理解しないまま従来のマネジメントを続けてしまうと、新入社員の不満に気づかないまま、新入社員が退職してしまうという結果を招きかねません。逆に、世代特性を踏まえてコミュニケーションを工夫すれば、早期離職のリスクを大きく下げることができます。

新入社員のエンゲージメント向上には「ここレポ」がオススメ

新入社員の定着には、本人が「困ったときに受け止めてもらえる」という安心感を持てているかどうかが大きく影響します。しかし現場では、上司が部下1人ひとりの変化に常に気づくことは容易ではありません。

そこで役立つのが、従業員エンゲージメント向上支援サービス「ここレポ」です。日々の簡易サーベイと顔写真の記録を通じて感情の変化を可視化し、モチベーションの低下や孤立の兆しをいち早く発見できます。上司は声をかけるべき部下を直感的に把握でき、適切なタイミングで寄り添うことが可能になります。部下にとっては「見てもらえている」「気持ちを受け止めてもらえる」という実感につながり、定着率向上に直結する「安心して働ける環境」を実現します。

鈴与シンワートの従業員エンゲージメント向上支援サービス「ここレポ」のロゴ

さらに「ここレポ」は、世代間の価値観の違いを埋めるツールとしても役立ちます。たとえば、「報告機能」を活用してチャット感覚で相談や困りごとを共有し、気軽にコミュニケーションを取ることが可能です。また「タイムスタンプ」で反応する仕組みは、デジタルに親しんだ若い世代に自然に受け入れられやすく、上司との心の距離を縮めるきっかけになります。

ここレポ」は単なる管理システムではなく、信頼関係を育み、世代を超えたコミュニケーションを後押しする仕組みとして、現場に新しい風をもたらすことにつながります。

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新入社員の早期離職防止策のまとめ

新入社員の早期離職は、採用難の時代において企業にとって大きな損失です。採用活動に力を注ぐことは重要ですが、入社後にどのように見守り、支え、成長を後押しするかが定着率を大きく左右します。

特に昨今の採用活動では、企業と学生はどちらも選ばれる立場であり、どちらにも見極めて選ぶ権利があります。入社前の会社説明などで自社をよく見せるために理想ばかりを伝えると、入社後のギャップを招きやすくなります。離職を防ぐには、ありのままの社内環境や働くイメージを人事部と現場の温度感を一致させた上で、新入社員に具体的に伝えることが重要です。

また、若手社員の退職理由の多くは労働環境や待遇だけでなく、人間関係の不安や、困ったときに気持ちを受け止めてもらえない孤独感に根ざしています。世代間の価値観の違いも影響するため、上司と部下、現場と人事が協力して日々の変化に気づき、適切にフォローできる仕組みが必要です。

ここレポ」のように従業員のエンゲージメント向上支援ツールを活用すれば、部下の感情の変化を可視化できたり、安心感を持ってコミュニケーションが取れます。採用に注いだ労力を「定着」へとつなげることこそ、これからの企業に求められる人材戦略の重要な視点です。

鈴与シンワート従業員エンゲージメント向上支援クラウドサービス「ここレポ」は、人事担当者に役立つ機能や業務サポートに力を入れています。お気軽にお問い合わせください

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著者

「ここレポ」サポート担当

「ここレポ」サポート担当

働き方の多様化に伴い在宅勤務が定着し、企業は従業員の定着や業務改善につながる従業員のモチベーションアップが課題となっています。
この課題解決方法の一つとして、従業員のエンゲージメント向上が有効とされ注目を集めています。
従業員が元気に安心して働ける環境づくりと多様化する働き方を支援するためのサービスや、課題解決へのヒントをお伝えしていきます。
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